芸能界にもファン多数!「一夫多妻制アイドルグループ」清竜人25のピースフルな魅力
タレメREPORT2016年3月24日5:50 PM
最新シングル「LOVE&WIFE&PEACE♡」のMVで、ヒッピー風の衣装に身を包んだひとりの男性と6人の女の子。その彼らは、実はひとりの夫と6人の妻なのだ……という一夫多妻制のコンセプトで活動しているアイドルグループが清竜人25です。
シンガーソングライターとして活動してきた清竜人が、メンバーとプロデューサー、そして夫を兼任し、妻たちは全員「清」姓を名乗っているという突飛なコンセプトのグループです。アイドルグループではセンターが変化することもありますが、清竜人25ではもちろん清竜人が常にセンター。6人の妻とともに歌い踊る光景は、さながらハーレムのようです。
テレビ多数出演!清竜人25のアイドルらしからぬコンセプト
清竜人25は、2014年9月に初めてステージに立ちました。私はその2か月後、2014年11月に初めて彼らのライヴを見ましたが、アイドルを名乗っているのに「一夫多妻制」であり、日本のアイドルシーンに存在し続ける疑似恋愛的な要素をあっさりと無視しているステージに驚愕したものです。清竜人25は、主催イベント「清竜人ハーレム♡フェスタ」をTSUTAYA O-EASTで開催することが多いのですが、私が初めて見たときもその広いステージでミュージカルのように7人は歌い踊り、そしてイチャイチャとした雰囲気を醸しだしていました。「アイドル」と名乗っているのにも関わらず。
2016年に入ってからの清竜人25は、NHK「MUSIC JAPAN」のような音楽番組はもちろん、日本テレビ系「行列のできる法律相談所」やテレビ東京系「ゴッドタン」のようなバラエティ番組にも出演しています。どの番組でも、その特殊なコンセプトが話題になりますが、それをフックにして幅広い層に浸透してきています。そして、私自身は清竜人25をずっと見ているうちに、清竜人25という「アイドルグループ」の存在にすっかり違和感を覚えなくなってきました。決して飽きたわけではありません。むしろ、そのコンセプトを支える音楽やパフォーマンスに、どんどん魅了されたのです。
「地下セクシーアイドル」の正体とは?見る者をバブル時代にトリップさせるベッド・インの真価
ソロから一夫多妻制へ。清竜人の類稀なる音楽性
清竜人25の2014年のデビュー・シングル「Will♡You♡Marry♡Me?」は、モーニング娘。の数々の大ヒット曲を手掛けたことで知られるダンス☆マンがアレンジを担当していました。2016年の最初にシングルである「LOVE&WIFE&PEACE♡」もアレンジはダンス☆マン。この2曲に共通しているのは、ソウルフルな楽曲であることです。特に「LOVE&WIFE&PEACE♡」には、1960年代後半のジャクソン5を連想させられました。また、2015年のサード・シングル「Mr.PLAY BOY...♡」は、チャビー・チェッカーをイメージしたテイストにしたと清竜人は語っています。こうしたアメリカの1960年代のポピュラー音楽を念頭に置く一方で、同時代的なEDMの要素もTom-H@ckらを起用して導入しているのが清竜人25の音楽の面白さです。「LOVE&WIFE&PEACE♡」の付属DVDには、2015年9月30日のライヴの映像も収録されているのですが、清竜人がグランドピアノでフェリックス・メンデルスゾーンの「結婚行進曲」を弾くシーンも収録されています。そこでは、3歳からピアノを習いはじめた清竜人のクラッシックの素養も顔を出しているわけです。
2014年10月に「Will♡You♡Marry♡Me?」のMVが公開されたとき、清竜人25は一部のアイドルファンの間でまたたくまに話題になりましたが、それ以降「清竜人25というグループはいつまで続くのだろうか」という声も絶えずありました。清竜人25が誕生したのは、清竜人が孤独なソロ活動に飽きたことが理由だといいます。とはいえ、清竜人はソロ時代から、アルバムごとに作風もヴィジュアルも大きく変わることで知られており、それゆえに清竜人25も長くは続かないのでは……という不安を生んできた面もあったのでしょう。実際、2016年の初頭には「清竜人25 “倦怠期♡ツアー”」というアイロニーをこめたタイトルのツアーまで開催されています。
J-POPど真ん中!清竜人25のスタイルは実は正統派?
しかし、ファースト・アルバム「PROPOSE」がリリースされた後も、配信限定シングル「Christmas♡Symphony」がリリースされるなど、活動が止まることはありませんでした。「清竜人25 “倦怠期♡ツアー”」の後は、ワコールのキャンペーンソングでもある「LOVE&WIFE&PEACE♡」がリリースされ、清竜人25はすでにセカンド・アルバムへと向かっています。私もひとりのファンとして深く安堵しつつ、少し意外なほどの展開に驚きました。
清竜人25というグループは、まず一夫多妻制のコンセプトとともに紹介されることが多いですし、この記事もまた例外ではありません。しかし、前述したような音楽性やステージでのパフォーマンスに接していると、本質的にはまっとうな男女混成のヴォーカル・グループであることにも気づきます。私たちは「一夫多妻制のアイドルグループ」というギミックに、まんまと乗せられているも同然なのです。アイドルブームの中で、清竜人がJ-POPのど真ん中を狙って結成したのが清竜人25です。清竜人25が続いているのは、そのスタイルの有効性がまだまだ持続しているからでしょう。
アイドルを超えたファンタジー!清竜人25の今後に期待
そして、アイドルグループにしてはアイドル然としていないのも清竜人25の特長です。かつては、リリース・イベントでの握手会や、ライヴ後にファンに指輪をつける「指輪贈呈式」などのイベントがありましたが、「LOVE&WIFE&PEACE♡」でのリリース・イベントは1回のみ。アイドルは通常、リリース週のオリコン集計期間は毎日のようにリリース・イベントを開催するものですが、清竜人25になると「LOVE&WIFE&PEACE♡」の発売日に何をしているのか謎なほどなのです。そこに彼らのスタンスがよく表れています。普通のアイドルのように「CDを積ませる」ことをしないのです。
とはいえ、ライヴで響く歓声を聞いたら、清竜人25がアイドルグループではないとは言えないでしょう。清竜人を筆頭に、清竜人25の個々のメンバーのキャラクターの魅力は大きく、夫人たちもどんどん存在感を増してきています。そして、一夫多妻制が「設定」であることは誰もが知っているのに、それでもファンが増えているのは、清竜人25というグループにあるファンタジーや幸福感が損なわれることなく活動できているからでしょう。見る者に夢を見させる、という点で清竜人25はしっかりと「アイドル」として成立しているのです。
独特のスタンスによって、もはや独立したジャンルと化している清竜人25。セカンド・アルバムに向けたセカンド・シーズンで、彼らがどこまでJ-POPシーンに受け入れられていくのか楽しみにしましょう。清竜人25には、ずっと夢を見させてほしいのです。
◆ 文/宗像明将
1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」「Yahoo!ニュース個人」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイドルに関しての原稿執筆も多い。
*新刊情報*
「MOBSPROOF EX CREATOR LIFE is HARD
『渡辺淳之介 アイドルをクリエイトする』」
2016年4月28日発売!(河出書房新社)