結婚後にカツラや整形が発覚!これって詐欺じゃないの?「詐欺行為」について弁護士に聞いてみた!
タレメREPORT2017年5月22日11:50 AM
1月期のドラマ『嘘の戦争』。様々な人間の思惑や過去の出来事をめぐり、「嘘」を武器に主人公が復讐を遂げていく同作では、ラストシーンでは誰がどのような状況になっているのか、先の読めない展開にドキドキさせてくれました。
草なぎ君主演のこのドラマは、前述の通り「嘘」や「詐欺」がテーマです。そこで、今回は改めて「詐欺」という犯罪について弁護士の先生に聞いてみました。意図的に他人を騙す事が「詐欺」になるなら、具体的にどんな行動が「詐欺」扱いになるのか、いくつかの例を持って説明して頂きました。
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--記者
「詐欺」という言葉は、ニュースやドラマでも良く耳にしますが、実際はどのような定義の犯罪になるのでしょうか?改めて教えて頂けますか?
--岩沙先生
詐欺罪が成立するには、1)お金などの財物を獲得するために相手を騙し(この行為を「欺罔(ぎもう)行為」といいます。)、2)相手が錯誤に陥り、3)錯誤に乗じて、4)財物を交付させることが必要です。条文上は、「人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。」(刑法246条1項)と規定されています。
--記者
例えば、結婚後に夫が実はカツラだった事が発覚した。これは、妻は夫を詐欺として訴えられるのでしょうか?男女を逆に考えるなら、結婚後に妻の整形が発覚なんていうのも近いかもしれません。
--岩沙先生
カツラであったことを隠しながら結婚することが詐欺罪の欺罔行為といえるかどうかが問題となります。先ほどご説明したとおり、詐欺罪の欺罔行為に当たるには、財物を獲得するために相手を騙そうとする行為が必要となります。夫が妻と結婚することにより財産をだまし取ろうと考えているのであれば欺罔行為といえる可能性がありますが、純粋に結婚するためであれば欺罔行為には当たらないでしょう。妻の整形も同様です。
--記者
整形まではいかないにしても、結婚後に初めて見た妻のスッピンがもはや別人だった。このような場合はどうでしょう?もちろん女性は常に化粧をして意図的にスッピンを見られないようにしていた訳ですが、それ自体は割と普通の事のように思いますが・・・。
--岩沙先生
この場合もやはり財物の獲得に向けた欺罔行為があるとは言えないことから詐欺罪には当たりません。仮にこれで詐欺罪が成立すると、化粧をしている女性はみんな潜在的な詐欺師になってしまい、不合理な結論になってしまいます。
--記者
やはり詐欺と言うと、お金や物の貸し借りなどの問題が多いように思います。例えば、30年前に貸したファミコンのカセットを騙し取られた。こんな言い分は詐欺として成り立つのでしょうか?
--岩沙先生
詐欺罪にあたるには、30年前ファミコンを借りようとする際にそもそも返すつもりがなかったにもかかわらず騙して借りたといえることが必要です。もともと返すつもりがないのに友達を騙してカセットを借りたのであれば詐欺罪が成立します。
また、普通に借りた後に、単純に返すのを忘れているだけなら犯罪は成立しません。もっとも、所有者からの返還要求に対し、紛失してしまったなどと嘘をついて返さなかった場合、横領罪が成立する可能性があります。
--記者
最後にもうひとつ。10円で買ったガラス玉を綺麗な箱に飾り、100万円で販売。販売過程に特に嘘が無かった場合、これは詐欺になりますか?また、この場合、代理店などの販売手数料(原価に手数料として金額を上乗せして販売)と扱いはどう違うのでしょうか?
--岩沙先生
この場合にも欺罔行為があったかが問題になります。ガラス玉を100万円の価値があるもの(宝石など)と偽って販売し、お客さんが100万円の価値があると錯誤に陥り購入したのであれば詐欺が成立します。もっとも、販売の過程に嘘がなかった場合(ガラス玉として売った場合)には欺罔行為が存在しないので詐欺罪は成立しません。
もちろん、代理店などの販売手数料分を価格に上乗せすることは何の問題もありません。
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というワケで、今回は“詐欺”について、弁護士の岩沙先生に色々とお話を伺いました。ドラマや漫画などでは、異性の容姿の変化に対して「詐欺だ」などと口にするシーンを時々見かけますが、法的には詐欺行為には当たらないようです。逆に、そんなセリフを吐こうものなら、名誉毀損で訴えられてしまうかもしれません。言葉のトラブルには気をつけましょう。
・取材協力
岩沙好幸(いわさよしゆき)弁護士(東京弁護士会所属)
弁護士法人アディーレ法律事務所