渋谷TSUTAYA、来客数&売上倍増
エンタメNEWS2025年2月18日9:10 AM
東京・渋谷スクランブル交差点の目の前に立つSHIBUYA TSUTAYA
東京・渋谷スクランブル交差点の目の前に立つSHIBUYA TSUTAYA。1999年の開業から長きに渡りパッケージ(CD、DVD、Blu-ray Disc)レンタルや販売を中心に、若者向けの音楽文化を発信してきたが、昨年4月にリニューアルオープン。「世界中のIPで好きをつくるフロア」を掲げ、各フロアがさまざまなアーティストやキャラクターとのコラボスペースとなり、それぞれのファンが集う“推し活のビル”となり、連日にぎわいを見せる。新たな渋谷カルチャーの発信拠点のひとつになりつつあるSHIBUYA TSUTAYAのポテンシャルを、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)渋谷プロジェクトエグゼクティブプロデューサー・鎌田崇裕さんに聞いた。
【写真】『AKIRA』や『SLAM DUNK』、ハローキティの世界観を再現…“推し活の館”となったSHIBUYA TSUTAYA
◆パッケージ販売からロケーションを活かした体験特化ビルへ
――かねて渋谷スクランブル交差点のアイコンになっていたビルを全面改装し、いまの渋谷の街を象徴するような推し活に最適なビルにリニューアルオープンしました。その経緯を教えてください。
【鎌田崇裕さん】 時代に即した業態に変更せざるを得なかったことがあります。TSUTAYAとして、顧客価値にアジャストしたパッケージ流通の選択と集中を、この20年ほどやってきました。しかし時代の流れとして、選択肢が多岐に渡るさまざまなコンテンツの楽しみ方が、スマホに収斂されるようになりました。
そうしたなか、それまでの業態から、リアルな体験価値に特化する店舗への転換を2022年に掲げました。目指したのは、スマホで情報をキャッチアップするだけでなく、例えばコンサートやアトラクションに行った時のような、何かを体験して楽しいと思える場にすること。渋谷というロケーションの価値を活かした体験と空間の価値をビジネスにしていこうと進めてきました。
――体験と空間価値の創造は、どのようなことを主軸にしていますか?
【鎌田崇裕さん】 お客様の思い出に残り、楽しい記憶を持って帰れる企画をどう具体化するか。それはコンテンツホルダーやクライアントと一緒に形にしていきます。単純にグッズをたくさん集めて売るのではなく、この場だからこそ得られるコンテンツという期待感を演出します。
例えば、3階と4階の「SHARE LOUNGE」では、コンテンツを掛け合わせた展示やドリンクが提供されたり、5階の「POKEMON CARD LOUNGE」(E=アクサン・テギュ)では、会った人との『ポケモンカードゲーム』の対戦を楽しめたりします。
◆『SLAM DUNK』や『ハローキティ』…コンテンツの世界観や没入感を楽しめる体験を具体化したビルへ
――リニューアル前とはビジネス自体が大きく変わっていますね。
【鎌田崇裕さん】 世の中のコンテンツをどこよりも多く売るということを20年間やってきました。若者が多く集まる渋谷ですから、100万枚以上売れるCD作品が年間20〜30本あり、渋谷オリジナルの肖像やデザインを使った販促には、それほど力を入れなくてもよかった。いまも「世の中にあるコンテンツを多く提供したい」という意識は変わりませんが、そのために体験も含めた渋谷特化型のオリジナルコンテンツを作っていくビジネスになっています。
それは従来のリテールビジネスの枠組みを超えた挑戦です。改装前の売上シェアは物販6割、レンタル1割、カフェ2割、企業プロモーション1割でしたが、リニューアル後はプロモーション、カフェ、ラウンジがそれぞれ3割ほどになり、物販とプロモーションの垣根がなくなりました。コラボレーションで体験を提供し、物販購入するという収益構造が変わりました。
――小売という会社の根幹になる業態の変革に対して、社内のイニシアチブを取るのは難しくありませんでしたか?
【鎌田崇裕さん】 物販のロジックは40年の積み重ねがありますが、興行ビジネスをやってきたわけではないので、体験や空間のビジネスが本当に形になるのかは、確信を持てていませんでした。それでも、踏み出して行動しない限り何も生まれない。経営も巻き込んで実行メンバーの中で最終合意を取っていくプロセスが、一番大変でした。その結果、いま実績が伴って、社員のモチベーションも含めて会社の大きな原動力になっています。
――2024年4月のオープンからのコラボ実績を教えてください。
【鎌田崇裕さん】 大規模なものから、部分的なスペースでの小規模なものまで数多くありますが、月50件ほどです。コラボカフェなどワンフロア全体を使うコラボは、通常1〜2週間、長くて3週間の期間で変わります。
――特に反響が大きかったコラボには?
【鎌田崇裕さん】 映画『THE FIRST SLAM DUNK』の復活上映を記念したイベント『THE FIRST SLAM DUNK “COURT”』や『AKIRA REMIX』CD発売と書籍『OTOMO THE COMPLETE WORKS』(大友克洋全集)第二期刊行開始を記念したPOP UP STORE・DJイベント、50周年を迎えたハローキティの完全没入体験イベント『HELLO KITTY IMMERSIVE POP-UP!』、BLACKPINKのメインボーカルであるROSE(E=アクサン・テギュ)の1stスタジオアルバム『rosie』発売を記念した『ROSE』コラボレーションカフェなど、多くのファンが来店されました。
ただ、どのコンテンツも実施するだけでは、大きな反響が得られません。それぞれ映画公開や新作リリース、原作者の著書発売などエポックメイキングなタイミングに、体験や参加できる企画を行うことで反響が得られます。
――想定通りの反響を得られなかった事例もありますか?
【鎌田崇裕さん】 宣伝的なミッションが優先的になり、渋谷の街やこの施設のコンセプトからずれると、そうなることもあります。認知を得ることが目的であれば、結果的に果たせているのかもしれませんが、SHIBUYA TSUTAYAでやる意味がない。「コンテンツの素晴らしさをお客様に体験・体感してもらいたい」という目的であれば、長く渋谷で店舗を構え、知見のある弊社と一緒に形にすることで、より具体化されます。広告出向で情報を拡散させ、それが販売につながる間の重なる部分を、この場所で具体化するから意味があります。
――コラボする際の内装や空間デザインなどの演出において意識していることを教えてください。
【鎌田崇裕さん】 コンサート会場のグッズ売り場で何億円と売れるグッズを、他の店舗に置いても売れません。会場での高揚感と物販がセットになると、売上が異常値を示します。コンテンツの世界観を楽しむことで高揚感を生み出す体験を考えて、具体化することです。お客様の期待の上を行かないとコンサートや映画、配信でコンテンツを観ることにはかないません。この場でしか得られない高揚感が生まれることで、体験にお金を使う行為が生まれ、その先の販促につながります。
◆リニューアル後は来店数も売上も倍増 想定を超えた“楽しい場所”を提供
――リニューアル後のSHIBUYA TSUTAYAの数字的な状況をお聞きできますか?
【鎌田崇裕さん】 来客数は季節によって変わりますが、倍以上になっています。5月の大型連休がトップラインになりますが、改装前は1.5〜2万人だったところ、昨年5月のリニューアルオープン直後は4万人を超えました。来客数が下がる冬場の1〜2月は、以前は月1万人を切っていましたが、いまは3万人ほどを維持しています。それだけコンテンツもブッキングしていますから、売上としても倍増しています。
――客層の大きな変化はありますか?
【鎌田崇裕さん】 渋谷は2017年くらいから訪日外国人観光客数が伸び、いま日本中で前年比が一番高いのは渋谷です。欧米をはじめ外国の方は、体験をするために来日されています。そこに優良コンテンツがあれば、円安もあり、思い出としてたくさん購入する。日本固有のコンテンツだけでは、外国の方の消費はあまり促されないので、海外でも通用するメジャーなコンテンツをブッキングすることもあります。
――推し活をする人の熱量を体現し、いまのSHIBUYA TSUTAYAは「推し活の館」とも言われています。3人に1人が推し活をしている中、“推し活市場”について、どのように見ていますか?
【鎌田崇裕さん】 私が入社してからの約20年間を考えると、恐ろしいくらいに拡張しています。さまざまなグッズが形を変えつつ種類も増え続け、コラボカフェもたくさんあり、その空間で過ごすことが普通になっています。その背景には、コロナ禍の2年間に、自宅でコンテンツを楽しむ人が増え、配信サービスの影響でアニメを中心に日本のコンテンツが世界に広がり、市場がグローバルで飛躍的に拡張していることがあります。
弊社もコンテンツをスマホで観るだけではない逆張りをどれだけ具体化できるのか、常に市場を分析してアイデアを絞っていかないといけないと考えています。
――近年の渋谷は「ギャルの街」からアイドルやK-POPアーティストなど「推し活の街」に変わりつつあります。いまの渋谷をどう見ていますか?
【鎌田崇裕さん】 個人的には、“観光の街”だと認識しています。その観光の中に、エンタテインメントのコンテンツが多岐にわたりあることで、“推し活”の街として見えているのかもしれません。秋葉原や池袋、中野ブロードウェイのように特定のコンテンツを求めて、しっかりとした目的を持って行く場所とは異なり、渋谷には何か楽しいことがあるというイメージが定着しています。そんな楽しそうな街だから、多くの人が足を運ぶのでしょう。その渋谷駅前にあるスクランブル交差点のロケーションを預かる弊社が、世の中の期待に応えられているかが重要だと感じています。
――この先のSHIBUYA TSUTAYAをどのように考えていますか?
【鎌田崇裕さん】 ほかの小売やIP企業とは異なるビジョンを体現する業態を突き詰めていきます。何かしらの期待を持って渋谷の街に来た人に、想定を超えた楽しい場所を提供していく。そしてその先に、海外へと広がる動線作りのきっかけになれば、さらに意味のある場へとなるのではないでしょうか。
(文/武井保之)
ORICON NEWS(提供:オリコン)
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