日本のサスペンスドラマ枠が減少・・・?『火曜サスペンス劇場』はなぜ消えた!?
タレメREPORT2015年9月6日9:55 AM
サスペンス的な場面を見た時、思わず「火サスかよ!」と突っ込むのはある意味お約束。「チャチャチャチャ、チャチャ、チャーチャー」って奴ですね。二時間ドラマは数あれど、これほど「サスペンスといえば」な番組は他にはありません。今回は、そんな「火曜サスペンス劇場」についてご紹介いたします。
どうして2時間?
日本では一般的な連続ドラマは1時間枠で週1回、映画などは2時間程度が平均です。映画が2時間なのは、人間の座っていられるちょうど良い時間というのもありますが、映画館は、お客さんがある程度回転しなくてはいけないからでしょう。たとえば、3時間以上のオペラや舞台は幕間に休憩が入ることも多く、その間に食事などをとります。つまり「空腹にならずに集中して観ることのできる丁度良い時間」が2時間と考えられているようです。
また、映画製作の学校などでは、ハリウッド映画を例にだし「起(30分)承(30分)転(30分)結(30分)」で脚本を書かせる授業があったりしますし、2時間くらいがちょうど良く物語を終結させられるというのが一般的な考え方のようです。
推理小説などを原作としていることも多く、文庫本一冊程度の内容を1時間にまとめるのが難しいという理由もあるかもしれません。連ドラ化されている推理小説などは、「前後篇」を使い、2話連続で1エピソードの事件を解決することも多いです。
サスペンスタイムはプライムタイム!
実は2時間サスペンスが放送されている21時~23時は、日本のテレビ局では「プライムタイム」と呼ばれ、もっとも視聴率が取れる(といわれている)時間帯です。学校や会社から帰宅している視聴者がテレビを視聴しやすいというだけでなく、夕食後にダラダラとなんとなくテレビを観る事のできる安らぎの時間帯です。
特に火曜サスペンス劇場の放送されていた日本テレビは、1975年~1977年、1994年~2005年まで、この放送枠で視聴率首位に輝いています。最も視聴率が取れる時間で首位という事ですから、どれほど視聴率が高いのかがわかると思います。当然、局が力をいれている枠。そのため、「火曜サスペンス劇場」はキャスティングも製作費もスタッフも豪華。単発が多いので意外と見過ごされがちですが、実は名作ぞろいでした。
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2時間サスペンスのパイオニアと現在の状況って?
テーマジングル(アイキャッチ音)や名前があまりに有名なので、「2時間サスペンスといえば火曜サスペンス劇場=火サス」と思われがちですが、実は2時間サスペンスのパイオニアは、『相棒』などの人気作品を生み出しているテレビ朝日系列の「土曜ワイド劇場」。なんと1977年から放送されています。土曜日ということもあり、在宅率も高い事から人気に火が付きました。そして、その次に生まれたのが「木曜ゴールデン」1980年です。「火曜サスペンス劇場」と同じ日テレ系ですが、人気が高くなったため、翌年東京の日本テレビ製作は「火曜サスペンス劇場」、よみうりテレビ製作は「木曜ゴールデンドラマ」とすみ分けされました。
全盛期は「月曜ゴールデン」(TBS)、「火曜サスペンス劇場」(日テレ)、「水曜女と愛のミステリー」(テレビ東京)、「木曜ゴールデン」(日テレ)、「金曜プレステージ」(フジ系)、「土曜サスペンス劇場」(テレビ朝日)と、ほぼ毎日サスペンス枠のドラマが放送されていました(名称は代表的なタイトルを表記)。
火曜サスペンス劇場は、内部にも外部にもライバルが存在し、それだけ切磋琢磨していたからこそ、印象深い枠になったといえるでしょう。しかし、実は現在「火曜サスペンス劇場」という番組枠はありません。現在火曜サスペンス劇場枠は、バラエティ番組『踊る!さんま御殿!!』『解決!ナイナイアンサー』、木曜ゴールデン枠は『秘密のケンミンSHOW』『ダウンタウンDX』が放送されています。どれもとても人気の番組です。
さらに、現在2時間サスペンスドラマは減少気味。フジテレビ系は2時間枠こそありますが、もともとがバラエティ枠だったためか、サスペンスドラマだけではなく、ドキュメンタリーやバラエティ、映画などを放送する自由枠となっています。これは、製作費や製作時間のかかるドラマよりもバラエティの方が、費用対効果が高いということでしょう。2時間サスペンスの撮影はおよそ2週間程度。現在はスケジュールがタイトな事やスポンサー不足で製作費にも制限があり、NGの少ない安定した演技の役者さんが多く起用されるのも当然の流れなのかもしれません。
文/藤原ゆうこ