新浜レオン、紅白初出場までの軌跡

#山本譲二#木梨憲武#五木ひろし#氷川きよし#ジョージ

エンタメNEWS2024年12月25日11:40 AM

『第75回NHK紅白歌合戦』への初出場が決まった新浜レオン

 今年第75回を迎える『NHK紅白歌合戦』で、演歌・歌謡曲のジャンルで純烈以来、6年ぶりとなる“初出場”の座を獲得した新浜レオン。令和初日の2019年5月1日のデビューから5年、今年は9月11日にリリースした最新作「全てあげよう」がオリコン週間演歌・歌謡シングルランキング1位を通算6週獲得し、今年度の最多タイ記録を達成。テレビやラジオにも引っ張りだこになるなど、めざましい活躍を見せた。そんな新浜の紅白初出場に至るまでの軌跡と、「10周年には千葉のZOZOマリンスタジアムと甲子園球場でソロコンサートを開催したい」という目標を聞いた。

【写真】より大きな世界を目指したいと語る新浜レオン

■プロ野球選手になる夢を捨て、父の背中を追って演歌・歌謡の世界へ

 新浜が演歌・歌謡曲の歌手を目指したのは意外と遅く、高3の夏。それまで追いかけてきた甲子園出場の夢が破れた時だった。

 「小学2年から野球をやっていて、高校生になったら甲子園に出場して、その後はプロ野球選手になることだけを目指していました。ところが、高3のとき、千葉県大会のベスト4で敗退してしまいまして。いくつか大学からお誘いもいただいたのですが、自分の中では、実力も含めてここまでかなと限界を感じて、野球の道はあきらめようと決意したんです」

 悔しい思いを抱えながら、ともすれば無気力になりそうな状態の中、新浜が前へ進む光を見いだしたのは、演歌歌手の父の背中だった。新浜の父親は『伯方の塩』のCMで知られる高城靖雄。自分のこれからの生き方を考える中で、「歌一筋で育ててくれた父の仕事はどういうものなのか」と興味を覚え、高3の夏休みには坊主頭のまま、父親のカバン持ちを始めたという。

 しかし、歌手という仕事の厳しさを知っているからか、「母親には歌手になることを猛反対された」という。大学に進学し、卒業までに気持ちが変わらなければ改めて目指せばいいという許しを得て、大学に通う一方で、父親の運転手やバックコーラスを務め、デビューのために、デモ・テープをレコードメーカーやプロダクションに送るなど、歌手になるための活動は自主的に取り組んだ。

 そして母親との約束の期限が目前に迫った大学4年の6月。最後の最後というところでデモ・テープをきっかけにデビューのチャンスをもらったのが、現在所属するBeing(現・B ZONE)だった。

 「うれしかったんですけど、Beingの所属アーティストと言ったら、B’zさんやZARDさん、倉木麻衣さん、大黒摩季さんで。僕は本気で演歌歌手を目指していたので、大丈夫か?と」

 父親の仕事柄、家の中でも車の中でも常に身近に流れていたのは演歌・歌謡曲。流行のJ-POPを聴くことはあったものの、西城秀樹の大ファンだった新浜が目指していたのは、演歌・歌謡の世界だったのだ。

■「窓拭きダンス」が大バズリ 演歌・歌謡曲の素晴らしさを若い世代に届けたい

 大学生の頃には、氷川きよしの影響もあって髪が長めでスタイリッシュな若手演歌歌手が増えていたが、自身はその反対に、野球一筋だった経験を活かし、筋トレに励み、日焼けした肌に短髪と、「山本譲二さんや鳥羽一郎さんのように男のニオイがプンプンする歌手を目指していた」という。しかし、事務所の面接時に社長から、「もう少し体型を絞ったほうがいい」と言われ、「とにかく本気でプロになりたかったので、2週間後に設けられた宣材写真のテスト撮影までに本気を見せようと、2週間で10キロ痩せました」と快活に笑う。こうと決めたら一直線、野球で培った根性はこんなところにも垣間見える。

 こうして2019年5月1日にデビューを果たしたのだが、その第一歩は決して順調とはいえないスタートだった。

 「今でもよく覚えているのですが、デビュー前に上野の御徒町のパンダ広場で最初にやったお披露目イベントは、観客がハト3羽でした。でも、とにかく新浜レオンという存在を知ってもらうしかないと、そこから全国各地で地道にキャンペーンを重ねていって、最初の頃は5人とかだったんですけど、少しずつ少しずつ応援してくださる方が増えていって、その年の日本レコード大賞で新人賞をいただくことができました」

 しかし、デビュー2年目からはコロナ禍に見舞われ、活動の制限を余儀なくされてしまう。それでも、自分磨きを怠らず、配信でコンサートやイベントを行うなど、積極的に活動を続け、コロナ禍にリリースした2ndシングル「君を求めて」、3rdシングル「ダメ ダメ…/さよならを決めたのなら」、4thシングル「ジェラシー ~運命にKissしよう~」はすべて、オリコン週間演歌・歌謡シングルランキングで1位を獲得。さらに、2023年にリリースした「捕まえて、今夜。」では、オリコン週間演歌・歌謡シングルランキング1位を獲得するとともに、新浜が目指していた目標も達成することができた。それは「演歌・歌謡曲を若者に広めたい」という思いだった。

 新浜は父親に憧れる一方で、子どもの頃には友だちなどから「演歌歌手の子ということで『昭和の息子』みたいな言われ方をされてきた」という。

 「なんでこんなに素晴らしいのに、演歌・歌謡曲というだけで聴くこともせずにそういうことを言うのか。悔しい気持ちをずっと抱いていたので、歌手になってからは、演歌・歌謡曲の素晴らしさを知らない世代に届けることこそ僕の使命だと思って活動してきました」

 そんな思いが叶い、5thシングル「捕まえて、今夜。」は、前年の2022年10月からアニメ『名探偵コナン 犯人の犯沢さん』のオープニング主題歌に決定。サビの「窓拭きダンス」と呼ばれる振り付けで大ブレイクした。年齢性別国籍を超えてTikTokに「踊ってみた」動画をあげる人が続出し、関連コンテンツはトータル1億回再生を超えるほど大バズリとなった。みんなが真似をしたくなるこの振り付けのヒントとなったのは、新浜が敬愛してやまない西城秀樹さんだったという。

 「暇さえあれば秀樹さんのライブ映像や出演番組を観ていて、小さい子から大人までみんなが一緒に振りを真似ている様子に、僕もこんなふうな世界観を作りたいと考えてきました。ダンスは若者の間でトレンドとなっていますから、そういうことも取り入れて、演歌・歌謡曲に興味をもってもらうきっかけになったらと思ったんです」

■紅白出演は甲子園の切符 ここをスタートに大リーガーを目指したい

 こうして、新浜のファン層は一気に広がる。そして、その先に訪れたのが今年リリースした6thシングル「全てあげよう」をプロデュースした木梨憲武との出会いだった。作詞作曲を手がけた所ジョージと3人で、「この曲をヒットさせ、紅白初出場を果たそう」と誓い合ったという。「紅白を目指す」と新浜が口にしたのは、前年の「捕まえて、今夜。」のリリースイベントが初めてだった。

 「子どもの頃から、父や周りのスタッフに『紅白に出場することは宝くじに当たるより難しいこと』と言われていたので、紅白に出たいなんて簡単に言ってはいけないとずっと思っていたんです。でも、あるとき、五木ひろしさんに『叶えたいことは口にしなさい』と言われまして、そのときから口にするようになりました」

 こうと決めたら一直線の新浜は、こんな行動にも出た。それまで新浜は、「演歌第7世代」や「神ファイブ」など、若手演歌歌手たちのリーダー的存在として、コンサートやテレビ番組などで精力的に活動してきた。しかし、紅白を目指すと決めたことで、「演歌第7世代」の活動から卒業することを決意したのだ。

 「レコード会社や所属事務所の枠を超えて、演歌・歌謡曲が大好きな同世代の仲間が集まって、励まし合いながら盛り上げようと取り組んできたことは本当に楽しかったし、勉強にもなりました。でも、どこかで甘えたり、頼ったりしてしまう自分がいる。だから一度区切りをつけて、俳優やバラエティタレントなど、新しいことに挑戦しようと思ったんです。正直、卒業はつらかったですが、やはり何かを本気でつかみたいなら、何かを犠牲にするぐらいじゃないといけない、ここで甘えていちゃダメだ、より大きな世界を目指そうと決意しました」

 「令和を代表する歌手になる」と決めて令和元年5月1日にデビューし、演歌・歌謡枠で令和初の『紅白』初出場を決めた新浜。しかし、今は、「喜びよりも身が引き締まる思い」だと、真剣なまなざしで語る。

 「僕は、いつも自分の歩む道を野球に例えて考えているんです。甲子園の切符を得て、1勝して2勝して、優勝して、高校選抜に選ばれて世界と戦って、プロ野球選手になって、優勝して、大リーグに行って。そう考えると、今の僕は、やっと甲子園出場の切符を得られたところ。この先まだまだ道は続きます。まずは、10周年に、野球で甲子園出場の夢が途絶えた千葉のZOZOマリンスタジアムで単独コンサートをし、その後、甲子園球場で単独コンサートを果たしたい。そこを目指して、今後もコツコツ進んでいきたいと思っています」

 ところで、出場歌手決定の記者会見では「コングラッチュレオン」「盛り上がレオン」などのレオン語も話題となったが、本番もレオン語が飛び出すのか?

 「ちょっとでもいいから披露したいですね。有吉(弘行)さんに『がんばレオン』って言っていただけないかなと(笑)。そして、レオン語を流行らせて、来年には流行語大賞を狙っています!」

 大みそかの夜、紅白のステージをどんなパフォーマンスで盛り上げてくれるか、楽しみにしていたい。

文・河上いつ子

#木梨憲武#氷川きよし#山本譲二#五木ひろし#ジョージ

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音楽

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