今だからこそ聞くべき耳の恋人「ラジオ」。興味深き“ラジオの今”を紐解いてみる!
タレメREPORT2015年4月18日12:05 PM
一昔、ふた昔前の若者にとっては、受験勉強をしながらラジオを聞く、というのは一般的なスタイルでした。語呂合わせを必死に覚えていたはずなのに、思い出すのは、「あの芸人さんがラジオで言ったネタ」「あのDJが紹介した曲」というのは、深夜ラジオ世代の「あるある」ともいえます。
若者の心をとらえたラジオ
テレビ放送が始まってから、ラジオはテレビとの差別化を推進してきました。テレビで流れることが少なかったロック系の洋楽が流れ、「新しいもの」が好きな若者の心を捕らえたのもこの戦略が功を奏したといえます。
その後、若手芸人や若手アイドル歌手、フォーク歌手の起用が相次ぎました。テレビではさまざまな理由でカットされるような話がラジオでは聞けるため、ファンは目当てのタレントさんのレアな情報を収集するために夢中になってラジオを聞いたものです。
それまでは、音楽を聴くにもテープレコーダーだった時代。いちいちカセットテープを取り換えるのが面倒でしたが、CDの普及や、デジタル音楽プレイヤーの普及で気軽に音楽を楽しむことができるようになりました。そのため、ラジオの聴取率も減少傾向にあり、特に若者のラジオ離れが顕著に現れています。しかし、リアルタイム聴取者こそ減っていますが、動画配信サイトや、ポッドキャスト、radikoなどの配信サイトの普及もあり、アメリカでは逆に「リスナー」は増えているという報告もあります。
多様化する現在、最小限の編集で届けられるラジオこそ、生の声が聞ける媒体だと見直されているのかもしれません。さて、そんなラジオを届けるパーソナリティーとは一体どんな方なのでしょうか?
関係者がそのままラジオパーソナリティーに
テレビ普及後は、ほとんどが社内制作だったなごりからか、現在も放送作家や局内スタッフ、局アナなどが務めることが多いラジオパーソナリティー。放送作家では高田文夫さん、永六輔さんなどが有名です。森三中の大島美幸さんのご主人、鈴木おさむさんなども放送作家からラジオパーソナリティーになり、人気に火がついた方です。
トークが自慢の吉田照美さん、森本毅郎さんなどは局アナでしたが、軽快なトークが評判を呼び、テレビのコメンテーターとしても活躍しています。1986年から続く長寿番組を担当する大沢悠里さんも局アナ。ゆっくりとした口調がリスナーの心をいやしてくれています。最近では赤江珠緒さんや、小島慶子さん、安住紳一郎さんなどが人気ですね。聞き取りやすく丁寧なしゃべりでリスナーの支持を得ています。また、ディレクターからアニメDJになったおたっきぃ佐々木さんのような珍しいケースもあります。
俳優やミュージシャンから
ラジオ俳優からテレビ俳優となった毒蝮三太夫さん、コミックソングを得意とする歌手のつボイノリオさんは、番組のあまりのおもしろさから圧倒的な人気をえて、もはや本業よりも「ラジオの人」のイメージが強い方々です。
武田鉄矢さん、南こうせつさん、長渕剛さん、松山千春さん、吉田拓郎さん、大槻ケンヂさん、谷山浩子さんなど、歌だけではなく人間性溢れるミュージシャンの番組は評判を呼び、歌以外の魅力を感じとった新たなファンを集めました。3月で深夜ラジオを引退したラジオ界の国宝、福山雅治さん、中島みゆきさんや、ゆずさんなど、長寿番組をもつミージシャンも、幅広い層から長い愛情を注がれています。最近ではライムスターの宇多丸さん、ゴールデンボンバーの鬼龍院翔さん、AKB48グループの佐藤亜美菜さん、高柳明音さんなども人気を博しています。
トークの達人お笑い芸人
80年代のビートたけしさんの登場で、ラジオ聴取率は爆発的に上がりました。その後も、伊集院光さん、爆笑問題さん、ナインティナインさんなど、テレビでは見られない本音や、未発表のネタ話、リスナーとの掛け合いなど、より身近に感じることができるお笑い芸人さんの番組は今もとても人気です。現在も上記の方々の番組は続いていますし、さらにおぎやはぎさん、くりぃむしちゅーさん、バカリズムさん、バナナマンさん、南海キャンディーズの山里さんなどの番組も高い支持を得ています。
山里さんは、ラジオの人気から、テレビでも声の仕事が増えているようです。異色なところでは、ダイノジの大谷さんでしょうか?お笑いやネタから離れ、オーソドックスなラジオDJスタイルで、熱く語る声は、リスナーの心に深くしみわたります。
アニメとラジオの深い関係
「声のお仕事」といえば声優さん、声優さんと言えばアニメですよね。1970年代の宇宙戦艦ヤマトブームからガンダムブームを経て、アニメ関係のラジオ番組は根強い人気となっています。以前はキャラクターソングやラジオドラマなどが流れる、アニメ作品ごとの番組や、アニメソングを流す番組が主でしたが、現在は声優さんがパーソナリティーを務めるトーク番組が主流です。
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過去にも麻上洋子さん、吉田里保子さん、井上喜久子さんや、久川綾さんなど、美しい声のお姉さまがパーソナリティーを務める番組は人気でした。それに加え、近年は、声優養成所のレッスンにラジオ向けの講座があるなど、声優界はラジオにも力を入れているようです。不思議ちゃんの金田朋子さんや、アイドル的人気のスフィアさんなど、たくさんの女性声優さん。ロケが面白いと評判の神谷浩史さん&小野大輔さん、異常なほどおかしい小野坂昌也さん&小西克幸さんなど、アニメファンでなくても十分に楽しめる番組を放送されいます。
ラジオパーソナリティーは、なりたいと思ってなるというよりも「なった」という方が多い不思議な仕事です。漫画家の久保ミツロウさんや、ライターの能町みね子さん、女装家のミッツ・マングローブさんなどは「面白い人がいる」という評判から声をかけられ、人気パーソナリティーになりました。
ラジオは耳だけで分かるようにまとめられた情報源です。テレビを見るよりも詳しく丁寧な情報がダイレクトに伝わるために、作業しながら楽しむことができるエンターテインメントといえます。また生放送が多いので、CM明けなどに内容が戻らず、全体的にテンポが良いのが特徴といえるでしょう。福山さんは23年、永六輔さんの番組は48年、大沢悠里さんは39年、ラジオの特徴は長くリスナーに愛される所にあります。一過性のブームではなく、本物の実力、本物の人間性が、今日もラジオから聞こえてくるのです。
文/藤原ゆうこ