キュレーションサイトとは。便利なまとめ記事にも炎上や閉鎖の過去。2022年おすすめサイトの紹介も。
タレメREPORT2022年08月05日更新
みなさんは、普段どのようにして情報を仕入れているでしょうか。
キュレーションサイトを利用している方もいるかもしれません。
キュレーションサイトは2009年ごろから人気を博しましたが、物議をかもすことをもしばしば。
人気の要因や、かもした物議などを通じて、キュレーションサイトのメリットや問題点を考えてみましょう。
- キュレーションサイトとは
- 他のタイプのメディアとの違い
- キュレーションサイトの元祖「NAVERまとめ」
- 「NAVERまとめ」サービス終了の理由
- 「NAVERまとめ」の仕組み
- 「NAVERまとめ」が強かった理由
- ドメインパワーが強くなる要因
- 「NAVERまとめ」が露見させたキュレーションサイトの問題点
- クックパッド事件
- WELQ事件
- Googleの対応 - 健康アップデート -
- 初期キュレーションサイトの残したもの
- 2022年8月現在、運営中のおすすめキュレーションサイト。8ジャンル15サイトを紹介!
- まとめ
キュレーションサイトとは
まず、キュレーションサイトとは、どのような媒体なのか、からおさらいしてみましょう。
端的に説明すると、まとめサイトのことです。
現在は、インターネットに情報が氾濫するようになっており、情報の取捨選択が難しいと感じたことのある方も少なくないでしょう。
キュレーションサイトとは、数多くのニュースサイトやWEBメディアから効率よくニュースを読めるようジャンルごとにピックアップしているwebサイトのことです。
キュレーションメディアと呼ばれることもあります。
他のタイプのメディアとの違い
特定の専門分野を深掘りするバーティカルメディア(垂直型メディア)と比較すると、多ジャンルを網羅して多くのユーザーに対し幅広い情報をホリゾンタル(水平)に発信しようとしている点が異なり、特に話題が広まった(いわゆる〝バズった〟)コンテツを集めるバイラルメディアと比較すると、キュレーターが定めたテーマに沿って情報をまとめている点が異なります。
バーティカルメディアの例としては、ニュースに特化した「BuzzFeed Japan News(バズフィードジャパンニュース)」、レシピに特化した「クックパッド」などが挙げられ、バイラルメディアの例としては、ITmedia(アイティメディア)から派生した「ねとらぼ」、SNSの日常を中心に幅広い話題で構成する「grape(グレイプ)」などが挙げられます。
「保守速報」「はちま起稿」などネット掲示板(2ちゃんねる・ヤフコメなど)系まとめサイトは、テーマに沿うという点ではキュレーションサイトに似ていますが、内容はあくまで不特定多数の個人の書き込みになりますので、テーマの中で話題が偏ったり脱線したり、そもそも情報提供を意図して書き込んでいなかったり、という点でキュレーションサイトとは異なります。
キュレーションサイトの元祖「NAVERまとめ」
キュレーションサイトの元祖というべき存在として挙げられるのは「NAVERまとめ」でしょう。
NAVERまとめの歴史は、2009年〜2020年までの約11年間に渡ります。
2020年9月30日にサービスを終了しているため、2022年8月現在、Google検索でもNAVERまとめのページは表示されなくなっています。
約11年間の累計PV(ページビュー:閲覧された回数)は、なんと1,718億。
最高月間PVは31億を記録しています。
これほどのキュレーションサイトが、なぜサービス終了に至ったのでしょうか。
本記事では、元祖キュレーションサイトNAVERまとめがサービス終了に至った経緯を解説するとともに、キュレーションサイトのメリット、接し方を改めて考えてみたいと思います。
「NAVERまとめ」サービス終了の理由
NAVERまとめの運営会社はネクストライブラリ株式会社。
韓国最大のインターネットサービス会社、NAVER Corporation(旧・ネイバー株式会社)の子会社です。
同社は、NAVERまとめのサービス終了にあたり、次のように理由を発表しています。
「サービス環境・市場環境の変化による単独サービスとしての今後の成長性や、LINEグループ全体での選択と集中の観点などをふまえて検討した結果、今回の決断に至りました。」
「NAVERまとめ」の仕組み
NAVERまとめは、一般のユーザーが編集者として参加できるシステムを用意していました。
参加したユーザーが、テーマに沿ったインターネット上の情報をつなぎ合わせ、投稿することで記事が作られます。
この情報まとめ作業を行う人を、キュレーターと呼びます。
こうした記事の集合体としてのサイトがNAVERまとめでした。
「NAVERまとめ」が強かった理由
なぜ、NAVERまとめは、莫大なPVを叩き出すことになったのでしょうか。
それは、ドメインパワーが強かったためと考えられています。
ドメインとはインターネット上における、サイトの住所のことです。
記事のURLが「https://www.example.co.jp/category/post_01.html」なら、「example.co.jp」がドメイン名です。
Google検索の仕組みで、ドメインパワーの強いサイトの記事が、検索上位に表示される傾向があると言われています。
ドメインは、長期間の運用実績があったり、記事数が多いことで評価が高くなるとされています。
このような要因が積み重なって、Googleの検索アルゴリズムから高評価を受けているドメインをドメインパワーが強いと言います。
ドメインパワーは、SEO対策(検索エンジン対策)、Webマーケティングのうえで極めて重要な意味を持つのです。
ドメインパワーが強くなる要因
ドメインパワーが強くなるには主に2つの理由があります。
1つは、NAVERまとめは、最初期のキュレーションサイトで、元祖ともいえる存在だったということです。
NAVERまとめは、古参であったことで運営実績が評価されドメインパワーが強くなったと考えられます。
もう1つは、記事を無数に生成できるシステムだったこと。
先にご説明した通り、NAVERまとめは、一般のユーザーが編集者として参加して記事を生成することができました。
したがって、運営側としては記者(ライター)や編集者を雇う必要もなく、一般ユーザーに作業を外部化すること、いわば放ったらかしで無数の記事が生成される仕組みであったことが特徴です。
記事品質の良し悪しに関わらず、多数の記事・豊富な情報を掲載していることで、充実したサイトとみなされ、これもドメインパワーの強化に貢献したと考えられます。
こうしてNAVERまとめは、その強力なドメインパワーによって、専門家が執筆しているなど高品質な情報を発信しているWEBメディアをも押しのけるかのようにGoogle検索で上位表示された結果、WEBマーケティングに成功して数多くのユーザーをのアクセスを集め、莫大なPVを稼ぎ出したと考えられるのです。
これが当時の検索状況でした。
そして、その莫大な閲覧者にアフィリエイトリンクを表示し、リンク先に誘導された閲覧者が会員登録したり契約したりすると、広告主企業からNAVERまとめ側に対価が支払われる、というのがNAVERまとめのビジネスだったのです。
「NAVERまとめ」が露見させたキュレーションサイトの問題点
一般のユーザーに情報提供の場をを提供したり、効率よい情報収集の手段を提供していたかのように見えたNAVERまとめは、のちに登場する数々のサービスの先駆けともなりました。
しかし、先駆けであるがゆえに、当時としては未知だったキュレーションサイトの問題点を露見させることともなりました。
NAVERまとめでは、サービス終了までに累計180万の記事が作成されました。
累計1,718億PV、月間最高31億PV。
これほどのサイトが終了を余儀なくされたのは、キュレーションサイトが内在していた多くの問題点が明らかになったことと無関係ではありません。
NAVERまとめは少なくない検索ユーザーからは疎まれてもいました。
一般ユーザーが参加して記事を作成できるというサービスの性質上、記事内容の品質が担保できなかったためです。
執筆者によっては、情報の正確性・信頼性が低かったり、中にはモラルが欠如した記事も指摘されました。
そのため、検索エンジンを利用した情報収集の邪魔になると考える人も少なくなかったのです。
一方、前述の通り、キュレーションサイトはドメインパワーが強くなりがちで、当時の検索アルゴリズムでは上位に表示されていました。
内容を問題視する閲覧者と、ドメインパワーを評価して上位表示するGoogle検索アルゴリズムとの間に乖離が出ていたのです。
クックパッド事件
NAVERまとめの問題点を、最も端的に明らかにしたのは「クックパッド事件」でした。
クックパッドは、さまざまな料理のレシピを紹介するサービスです。
NAVERまとめ執筆者の一部が、クックパッドの有料会員向けレシピをNAVERまとめに無断転載する事例が多発し、たいへんな問題となりました。
NAVERまとめの記事というだけで検索上位表示されやすいという状況であったため、クックパッドの著作権を侵害して無断転載された記事のほうが、本家のクックパッドより上位に表示されてしまうということになったのです。
この事件は、関連記事の公開停止措置によって対処されました。
しかし、無数の一般人が記事制作者として参加できるキュレーションサイトのシステム上の問題点が強く意識されるようになりました。
著作権侵害の直接の責任は執筆者にあります。
しかし、プラットフォーマーであるNAVERまとめ運営も批判の対象となりました。
権利者がNAVERまとめ上の著作権侵害を申し立て、削除要請を行うと、運営側によって削除されるまでの間、元記事の側にNAVERまとめへの転載禁止の旨を表示するよう求められました。
この対応はプロバイダ責任制限法に準拠したものでしたが、著作権侵害をしているサイトより先に権利者に対応を求める形になったことで反発を招き、運営への強い批判が巻き起こりました。
WELQ事件
NAVERまとめ以外にも、問題視され閉鎖されたキュレーションサイトがあります。
むしろ、キュレーションサイトの問題を決定的にしたのは、NAVERまとめよりもWELQというキュレーションサイトかもしれません。
WELQとは、ディー・エヌ・エー(DeNA)が運営していた美容や医療に関する情報のキュレーションサイトでした。
「健康や医療をもっと身近に。」を標榜し、2015年10月にサービス開始しました。
医療記事も数多く取り扱っていましたが、無資格者による不正確な内容を掲載している、出典の明示など引用の要件を満たさず著作権侵害を犯している、といった記事が大量生産されていました。
こうした信頼性の低い記事が検索上位表示されていたのです。
生命に関わる精神的な悩みに関する検索語で上位表示されていた記事が、自己分析を行うアフィリエイトリンクへ誘導する内容となっており、誘導された先のサイトで無料登録するとWELQに広告収入が入る仕組みになっていたことなどが、2016年ごろから問題視されるようになりました。
こうした不適切記事が炎上してWELQサイトは、2016年12月1日に非公開とされ、最終的に閉鎖に追い込まれたのです。
DeNAは、閉鎖にあたり問題を謝罪し、記事の品質を管理する機能が存在しなかったと反省の弁を述べています。
Googleの対応 - 健康アップデート -
WELQ事件後の、2017年12月6日、Googleは検索エンジンアルゴリズムの大幅アップデートを行いました。
このアルゴリズムアップデートは、俗に「健康アップデート」と呼ばれます。
それまで、記事内容の質を問わず、ドメインパワーや記事数などからサイトの充実度を推測し、結果として信頼性の低いキュレーションサイト記事が上位表示される問題の解消を狙うものでした。
これにより、いわゆるYMYL(Your Money or Your Life)、金融や経済、健康、法律など、人の生活に重大な影響を及ぼす分野では、キュレーションサイトのみならず、ブログや一般のwebサイトでも、信頼性の低い素人記事は軒並み順位を落とされることとなりました。
現在では、執筆者の専門性、権威性、信頼性が重視されるようになり、専門資格の保持者や業界内で一定の信頼を得ている企業サイトの発信などが優先的に評価されるようになりました。
逆に、こうした要件を満たさない一般人の書いた医療記事や資産運用記事などは上位表示されづらくなっています。
Googleとしては、信頼性の低い情報を上位表示し続けていると、自社の信頼や広告収益に関わるため、閲覧者にとって有用な検索結果を提供できるよう、アルゴリズムの改善に努めているのです。
初期キュレーションサイトの残したもの
そして、この日を境にNAVERまとめのPV数は著しく減少していくことになります。
2015年1月には31億を記録したPVも2020年9月には7億にまで低下しました。
運営に見合う広告収入が見込めなくなったことでビジネスとして成立しなくなり、サービス終了の決断に至ったと考えられます。
運営会社・ネクストライブラリ株式会社が発表したサービス終了理由「今後の成長性や、LINEグループ全体での選択と集中の観点などをふまえて検討した」というのは「信頼を取り戻して採算を回復することは難しい、不採算事業は取りやめて他の事業に集中することにした」との意味と解されます。
閉鎖を惜しむ声もありましたが、このような経緯でNAVERまとめはサービス終了となったのです。
現在運営されているキュレーションサイトには、スマートニュースやグノシー、Togetterや食べログまとめなどがあります。
NAVERまとめやWELQは、これらのサービスに教訓を残しました。
また、TikTokやYouTubeなど個人が発信できるプラットフォームでは、著作権侵害コンテンツに対して著作権者が削除申請することでコンテンツを停止できる機能が用意されています。
様々な物議を醸したNAVERまとめやWELQですが、キュレーションサイトの孕む問題点を明らかにしたという点では一定の歴史的役割を果たしたのかもしれません。
2022年8月現在、運営中のおすすめキュレーションサイト。8ジャンル15サイトを紹介!
ニュース系
- ●グノシー
- インターネット上のニュースを独自のアルゴリズムで収集、配信しています。
- ●はてなブックマーク
- 多数のユーザーが各自オンラインにブックマークして公開することで旬なニュースや情報が集まります。
IT・ビジネス系
- ●Newspicks(ニューズピックス)
- 国際情勢、テクノロジー、金融、経済、政治、教育などのカテゴリごとに記事をまとめています。
- ●TechFeed(テックフィード)
- テクノロジー情報に特化したキュレーションサービス。デザイン・プログラミング・AIなど多カテゴリ。
- ●U-NOTE(ユーノート)
- 2~30代を中心とした若手ビジネスマン向けのビジネスニュース系キュレーションサイト。
女性向け
- ●TRILL(トリル)
- 2〜40代の女性向け。ビューティ・ファッション・恋愛など5つのカテゴリ。
- ●MERY(メリー)
- Z世代の女性向け。美容・ヘルスケア・ファッション・グルメなど多ジャンルに渡ります。
男性向け
- ●Smartlog(スマートログ)
- 2〜30代の男性向け。ファッション・ガジェット・ライフスタイルなどに加えオリジナル情報も。
- ●Men’s Beauty(メンズ・ビューティ)
- 男性向け美容キュレーションサイト。「身だしなみ強化書」とのこと。
グルメ
- ●食べログまとめ
- ユーザーがまとめた店舗リストの記事を発信できます。食べログの写真・口コミの引用OK。
- ●Web料理通信
- 飲食業界で働きたい人向けの店舗運営系セミナーやイベントの情報や、各地の食の情報など。
観光・アウトドア
- ●SOTO.JP
- アウトドア系の趣味に関する情報を発信。ランキング形式で分かりやすいのが好みの人におすすめ。
- ●RETRIP(リトリップ)
- 海外、国内各地の観光に関するまとめ情報を、地域別やタグなどで検索可能。
音楽
- ●Spincoaster(スピンコースター)
- キュレーターのイチオシ音楽の紹介、アーティストのインタビュー記事などを発信。
SNS
- ●Togetter(トゥギャッター)
- Twitterで注目のツイートを、話題ごとにまとめたキュレーションサイト。
まとめ
興味のある情報を効率よく入手できるキュレーションサイト。
一方で、不正確な情報、著作権を侵害した記事など、様々な問題もありました。
メリットばかりでなく、そういった注意点もあるのだということを常に意識する必要があります。
デマに惑わされたり、自分が著作権侵害をしたりしないよう注意を払いつつ、情報収集ツールとして上手に利用したいものです。