少年院で前科は付かない!?まるで全寮制の学校のようなもの!?「少年法」について弁護士に聞いてみた!
タレメREPORT2017年7月14日10:20 AM
2017春ドラマ「犯罪症候群」や「CRISIS 公安機動捜査隊特捜班」にて、テーマのひとつとなっていた「未成年」による犯罪。物語の中で起こる20歳未満の子供たちによる犯罪と、それと対峙する主人公たちの悶々とした想い。作品を見ている視聴者も何か感じるものがあったのではないでしょうか?
この未成年による犯罪を取り締まる法律として「少年法」というものがあります。今回は、そんな「少年法」に対しての疑問を弁護士の先生にぶつけてみました。今回お答え頂いたのは、アディーレ法律事務所の正木裕美先生です。
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--記者
ニュースでも時々耳にする「少年法」についてですが、改めて法律としてどのように定められているのか、詳しく教えて頂けますでしょうか?
--正木先生
少年法は、少年の保護・教育を理念とし、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分をおこなうことなどを目的としています。「この法律は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行う」(1条)。法律の大前提としてあるのは、少年は可塑性に富んでいること、簡単にいうと、成長過程にある未熟な存在であり、少年の更生のためには制裁や懲罰を与えるよりも、適切な保護や教育等の措置を行う方が有効だという考え方です。
少年法対象になる「少年」は、20歳に満たない未成年のことで、満20歳以上の成人には少年法の適用はありません。この少年にあたるかどうかによって刑事事件での取扱いが異なってきます。
成人が犯罪をおこなった場合は、刑事訴訟法が適用され、刑事訴訟法に従って手続きが進み、刑事裁判所が原則公開の法廷で審理をおこないます。しかし、少年が犯罪をおこなった場合は少年法が適用され、少年法に従って手続きが進みます。家庭の問題を扱う家庭裁判所で、非公開で審理が進められるので、プライバシーを守る点で少年の保護という少年法の理念に適っています。
--記者
漠然と、少年院=軽い、刑務所=重い、そんな印象を持っています。少年院と刑務所の違いとはなんなのでしょうか?中の環境、出所後の扱いなど、何か差があるのでしょうか?
--正木先生
そのような印象をお持ちの方も多いと思います。どちらも自由に外出はできませんし、規則正しい生活を送りながら更生を目指すという点では共通しているのですが、実は二つは目的も全く違うので、単純に軽い・重いという比較はできません。
刑務所は、刑の執行をする場です。例えば判決で懲役3年と言い渡された場合は、3年間一定の作業をして自分が犯した罪を償う場所が刑務所です。これは、刑罰であり、前科がつきます。
一方、少年院は、少年の健全な育成を図ることを目的として矯正教育をする場です。少年の更生を目指し、生活指導、職業指導、教科指導、体育指導及び特別活動指導(社会貢献活動等)といった矯正教育をするもので、刑罰ではありませんし、前科とは扱われません。いわば校則の厳しい全寮制の学校というイメージでしょうか。
--記者
極端な話、同じ犯罪に同じように関わった2人の誕生日が1日違うだけで、片方は少年法で守られ、片方は実刑判決に、など法的な扱いが変わる事はありえるのでしょうか?
--正木先生
少年が犯罪をおこなえば、その事件は全て家庭裁判所に送られます。犯罪をおこなった時点では20歳未満でも、家庭裁判所で審判(少年審判)がおこなわれる時点で20歳に達する者は、検察官送致され(逆送)、刑事裁判を受けます。逆送されると、成人と同様に公開法廷での裁判や判決言渡しを受けますし、実刑判決が出れば少年刑務所に入ります。しかし、検察官送致ができる場合は年齢超過と一定の重大事件に限られていますので、誕生日が1日違うことで、一方は少年法の適用を受け、他方は少年法の適用を受けないことは当然あります。
とはいえ、原則逆送とされている重大事件でも、年齢のほか、犯行の動機や態様、犯行後の情況、少年の性格、行状、環境などの諸事情を考慮して、刑事処分以外の措置が相当と認められるときは検察官送致しないことができるとされています。誕生日が1日違うという理由だけで手続きや刑が選択されているわけではありません。
また、例えば薬物犯罪だと、刑事裁判では初犯だと執行猶予付判決が下される(判決後はそのまま社会復帰して通常の生活を送ることができる)ことも多いのですが、少年審判だと少年院送致となる可能性が高いなど、違いが出るケースはあります。
--記者
最後にもうひとつ。その罪の重さにより、未成年にも関わらず、少年法が適用されなかったケースなどが過去にありましたら、実例として教えて頂けますでしょうか?
--正木先生
殺人事件であっても、未成年の犯罪であれば必ず少年法が適用されます。しかし、死刑・懲役又は禁錮に当たる罪や、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に当たるときには検察官送致され、刑事裁判を受けることもあります。未成年の刑事裁判で懲役刑を言い渡すときは、懲役○年とは言い渡さず、懲役●年以上▲年以下(不定期刑)と言い渡されます。
平成27年に起きた川崎市中1男子生徒殺害事件でも、少年法に従って手続きが進み、事件の内容や個々の事情に照らして3名の少年が刑事裁判を受けました。判決では、一人が懲役9年以上13年以下、一人が懲役4年以上6年6月以下、もう一人が懲役6年以上10年以下の不定期刑が言い渡されました。
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というワケで、今回は「少年法」について、弁護士の正木裕美先生に色々とお話を伺いました。どんなに重い罪であっても少年法は適用されるとの事。また、少年院という場所は罪を償う場ではなく、あくまで矯正教育のための全寮制の学校のようなものと表現されています。しかもその罪は前科とは扱われないようです。被害者やそのご家族、ご遺族の気持ちを考えると、なんとももやもやとした気持ちにもなりますね・・・。テレビなどでも少年法の内容や必要性など時々議論になりますが、我々自身ももう少し内容を理解し真剣に考えるべきなのかもしれません。
・取材協力
正木裕美弁護士(愛知県弁護士会所属)
弁護士法人アディーレ法律事務所