女性アイドル&シンガーがストーカーファンから身を守るには 小金井女性シンガー傷害事件の教訓

#ツイッター#アイドル#小金井#愛する#シンガー

タレメREPORT2016年10月28日12:25 PM

今年5月、東京・小金井市で発生した、芸能活動していた女子大生に対して、ファンの男がナイフで襲った事件。世の中に大きな衝撃を与えました。事件が起こってから5ヶ月になりますが、芸能人とファンとの距離感がイベントやSNSを通してどんどん縮まるなか、これからも似たような事件が起こる可能性はないとは言えません。この事件を教訓に、若手女性タレントやその所属事務所にはより一層のリスク管理が必要となります。

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アイドルやシンガーを一人の女性として愛するようになる“ガチ恋”ファン

今回の事件では、女性歌手に熱烈な好意を寄せるファンが、本来の「タレント」と「ファン」の境界があいまいになってしまう…、“ガチ恋”ファンの存在がクローズアップされました。“ガチ恋”ファンとはアイドルやシンガーに対して、思いが一方的に加熱していき、一人の女性として愛するようになるファンのこと。そういったファンであっても、皆が皆凶暴ということではなく、静かに思い続けるだけだったり、一回の握手会にて何度も繰り返し参加して熱心に話しかけるくらいまでで、それ以上のアプローチをするファンはごくごく一部なのですが…。

そういったファンがつきやすい女性タレントは、性格的に優しそうで、多少いき過ぎた行動をしても文句を言わなそうなタイプ。逆にいえば、「多少強引にいけばもしかしたら付き合えたりするんじゃないか」という幻想を抱かせやすい。握手会で“神対応”(人一倍愛想が良く、ファン思いの対応をしてくれる)の人もそういうファンがつきやすい傾向があります。

タレントや所属する事務所、イベント運営者にとって、ファンによる凶悪事件に巻き込まれないためには大事なのは、攻撃的なガチ恋ストーカーを生み出さないこと、もし生み出してしまった時の対処方法をしっかり用意しておくことと言えるでしょう。

それは「アイドル」というカテゴリーではなくても、シンガー、ガールズバンドメンバー、演劇中心の女優などで、ルックスの可愛さも人気の要因になっている人にはあてはまることです。イベントなどで直接ファンとの接する機会が多い人は気をつけなければなりません。

ツイッターでのやりとりは特に慎重に

小金井の事件でも被疑者がストーカー化するきっかけはツイッターでのやりとりでしたが、SNSの扱い方には注意が必要です。タレントにとってファンに情報を伝達するためには便利なツールである一方、使い方次第ではストーカーを生み出す危険な展開になりかねません。

ファンを増やしたり、ライブの動員やCDのセールスを伸ばすために特にツイッターは有効なツール。自分のキャラクターや嗜好を知ってもらい、それによって愛着をもってもらうことは有益なことで、また、今回の被害者のようにフリーで活動している人にとっては、ライブやイベントのチケット予約、販売のツールとしても機能し、活動していく上で欠かせないものとなっています。

より親しみを持ってもらうために、相手のメッセージに返信(リプ返)したり、さらには相互フォローして、ダイレクトメッセージ(当事者同士にしか見れないメッセージのやりとり)するような場合もあり、これはもう個人のメールアドレスを教えているのと同じようなもので、慎重にやらなければいけません(事務所に入っている人はマネージャーが管理していると思いますが)。タレントにとっては便利なツールである反面、熱心すぎるファンを呼び込んでしまう可能性があり、その点で特に注意が必要です。

自分の思いを書き込むごとに、どんどん気持ちがエスカレートしていくのがSNSの特性。多数のファンを相手に発信しているメッセージも、自分に宛てていると勘違いしたり、妄想が膨らんでいきます。そして、相手が自分の思うような反応をしてくれない、たとえば「別のファンはリプをもらう回数が多いのに、自分はなかなかもらえない」「DMを送っても無視される」…そんなことがきっかけで逆恨みを買いストーカー化する恐れもあります。相手の雰囲気が何かおかしいとわかってからブロックしても、さらに逆恨みさせることになります。

特に、恋愛感情を抱くようなファンがつきやすいタイプのタレントのツイッターでは、「相互フォローはしません」「リプは仕事で関わりのある人のみ」というようなルールを宣言して活用することが望ましいのではないでしょうか。

「タレント」と「ファン」の境界を意識してもらうように

握手会等、直接ファンと接するイベントでは、親しみを持ってもらう振る舞いは人気を獲得する上で必要ですが、ファンとタレントの一線が希薄になってきている気配のファンに対しては、意識的に、その一線を意識せざるを得ないメッセージ、振る舞いも入れていく必要があるでしょう。

握手会でのやりとりやツイッター&ブログのコメントで、ファンとしての目線でなく、親しい友人や彼氏にでもなったかのような物言いをする人、過去記事をさかのぼって必要以上にプライベートの行動や友人関係などを詮索するようなコメントを書く人には特に注意です。

フリーのタレントは家族でも友人でもいいので同行してもらうこと

今回の被害者の歌手は、事件当時事務所に所属してはおらず、フリーとして活動していました。そのため、移動や会場入りも一人でした。アイドルの場合は、ライブ後に特典会が行われる機会も多いですが、フリータレントの場合、そういった場でも一人でファンと対応しなければならず、特に注意が必要です(イベント主催者が近くにいてくれることが多いですが)。ファンに親しんでもらうための振る舞いと、サービス精神を出しすぎて「自分に気があるのではないか」みたいな誤解を与えてしまわないような、バランス感は特に求められます。

今回の被害者の歌手は事件当日も一人で会場入りするところで被害に遭いました。事務所に所属していない人にとっては、一人で行動しない。友人でも家族でも同行してもらうことが必要でしょう。

もしファンが凶悪ストーカー化してしまったら…

もし凶悪ストーカー化してしまったファンが現れたら、まずは警察に相談。警察も今回の小金井の事件の教訓として、以前に比べると慎重で丁寧な対応をしてくれるはずです。今回の事件をふまえ、「ストーカー規制法」の対象をツイッターやフェイスブックなどSNSへの書き込みも対象に拡大する動きがあります。もしSNSなどでファンのストーカー化の気配が感じられたら、相手の書き込みを保存しておくことも大切です。

CDのセールスを伸ばしたりライブや演劇の動員を伸ばすためにイベント、ライブなどを通してファンとの距離を近付けることは大事なことになっていますが、過激なファンに襲われてタレント生命を絶たれてしまっては元も子もありません。ただ、凶悪化してしまうのはごくごく一部。大半は紳士的に応援してくれるファンだと思うので、警戒の気持ちが強く出すぎるとファンと微妙な距離感ができて、それはそれで得策ではありません。歌や演技などのパフォーマンスを磨くだけでなく、考えなければならないことが多くてとても大変ですが、バランス感覚をしっかり持って、夢を実現してもらいたいものです。

文/田中裕幸

 

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