視聴率も絶好調!目が離せない大河ドラマ『真田丸』大ヒットの要因を探る!
タレメREPORT2016年4月7日1:55 PM
ヒット作の宝庫・大河ドラマ。特に今年の大河ドラマ『真田丸』の勢いは凄まじいものがあります。『真田幸村』という魅力溢れる人物を題材としており、当然前評判も視聴率も絶好調です。今回はあらためて、『真田丸』の人気について紐解いてみましょう。
名前は知っているけど詳しくは知らない。だから知りたくなる!
真田丸を御覧の方はもうご存じでしょうが、「真田幸村」という人物は実在しません。『真田幸村』を有名にした『真田十勇士』の出てくる『真田幸村』は、真田信繁公をモデルとした創作です。
私たちがゲームや映画・ドラマ・小説・漫画などで知っている「真田幸村」は、徳川家に最後まで立ち向かい、「日本一の兵」と言われた名将の一人。豊臣軍の五人衆とも呼ばれました。これは事実ですが少し大袈裟に表現されています。
信繁が取りたてられたのは、あくまで有能な武将である父や兄の血を引く「真田の者」としての評価。いわば親の七光ですし、実は袂を別ってからはあの有名な「六文銭」の旗印も使用していなかったという説すらあります。イメージでは、「六文銭」を旗印に豊臣軍の重要な武将として大活躍した印象が強いのですが、実際のところは、“あまり期待されていなかった”のに“少人数”で素晴らしい活躍をした為に有名になった武将なのです。
「名前は知っている」「なんとなく凄いらしい」。そんなイメージを持つ真田信繁。実際のところはどんな人物だったのか?どんな評価だったのか?どんな生涯だったのか?知っているようで知らないからこそ興味を惹かれる、ドラマ的には実に“ちょうど良い人物”だったと言えるでしょう。
若手から重鎮まで!実力者のキャスティングが凄い!
『真田丸』の主演は、視聴率45.5%を誇るお化けドラマ『半沢直樹』の堺雅人さん。脚本は、その堺さんがブレイクするきっかけとなった『新選組!』の三谷幸喜さん。まさにゴールデンコンビといえます。
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そして脇を支える方々も豪華絢爛。側室には、昨年の日本アカデミー賞助演女優賞最優秀賞を獲得した黒木華さん。同じく今年優秀賞の長澤まさみさん。正室には、朝ドラ『あまちゃん』ヒロインの同僚役やバラエティ番組での活躍も目覚ましい演技派女優・松岡茉優さんと、抜群の演技力を誇る若手女優たちが数多くキャスティングされています。
また、袂を別つことになる兄・信幸 (信之)には、日本アカデミー賞・ブルーリボン賞常連の大泉洋さんを起用。コメディ色の強い大泉さんをあえて、「真面目」で「硬い」役に据え、大河で主演経験のある内野聖陽さんにコメディ色の強い徳川家康を演じさせるなど、意外性のある配役もたまりません。
草笛光子さんや、高畑淳子さん、木村佳乃さん、近藤正臣さん、遠藤憲一さんなど、そうそうたるメンツを配しながらも、信幸の妻役に舞台で有名な長野里美さん、数々のドラマに出演されている迫田孝也さんを信繁の右腕・矢沢三十郎頼幸(のちの矢沢頼康)に。木村佳乃さん演じる信幸 (信之)の姉・松の夫に声優の高木渉さんを起用するなど、要役に新しい風を入れるあたりが心にくいです。単なる話題性や人気だけでない、きちんとその「役」に適した俳優を配するキャスティングには、作品作りへのこだわりを感じます。
一人ひとりを掘り下げる“こだわり”がたまらない!
もちろん人物描写へのこだわりもたまりません。たとえば序盤で自害し舞台から去った武田勝頼。武田信玄の息子で、滅亡時の武田当主でありますが、実はつなぎ(陣代)であったという説もあります。今までは、甲斐の虎と呼ばれる父・信玄と比較され、「無能」「凡庸」といった描かれ方が多かったのですが、近年新府城の発掘調査から研究が進み、敵方の娘である夫人を最後まで伴うなど、その人間としての魅力が語られるようになり、今までの人物像が見直されいる武将の一人です。
演じたのは、勝頼と同じく同業界に偉大なる父母(平幹二郎さん、佐久間良子さん)を持つ平岳大さん。お父さんの幹二郎さんは、大河ドラマ『武田信玄』で信玄の父・信虎を演じられています。武田から見ると敵方である生母を持つ勝頼は、武田家では決して重要なポジションではありませんでしたが、兄たちの謀反や死亡により突如後継者となります。
これまでの「凡庸」な勝頼ではなく、家臣との絆に恵まれず、裏切る家臣を憎まず送りだす男らしさ、最後まで仕えた真田の者を生き延びさせようとするなど、器の大きい新たな勝頼を魅せてくれました。一話・二話の「武田勝頼」の物語だけでも十分に見応えがあり、二話ではもはや最終回の感動すらありました。
個人的には、関ヶ原で東西に揺れる小早川秀秋(浅利陽介さん)や、主君・黒田長政との不仲に揺れる後藤又兵衛(哀川翔さん)あたりは、心を打つシーンを量産してくれそうな予感がプンプンしています。
単なる「ヒーロー」ではない主人公の泥臭さ
「真田丸」とは、真田信繁の建てた大阪城の出城です。丸く飛び出た出城で敵を挑発し、謀略・策略で相手を混乱させ、負けてもなお信繁が「日本一」と言われるようになったのはこの「真田丸」での戦いぶりからです。
負け軍でありながらも「少数で大軍を翻弄した」ところが格好良いと、江戸時代から創作作品が数多く作られてきました。その魅力は、出城から神社まで通じる抜け穴や、屋敷内のからくり扉などの忍者感など、フィクションである「真田十勇士」を彷彿とさせるあたりも歴史小説ファンにはたまりません。
草刈正雄さん演じる信繁の父・昌之は、裏切ってもいない武将を「裏切り者」に仕立てて殺害させるなど、「非道」な人物。敵対する武将両方に媚びたかと思えば、思いもよらぬ瞬間に裏切り、しかもニヤニヤといい顔で笑う超のつくクセ者です。「大河ドラマ」の「ヒーロー」の父とは思えません。
しかし、その実「真田の民」や「信濃」を守る為にはなりふり構わないという愛情も兼ね備えています。信繁も、父や伯父、そして愛する人の心から謀略を学び、「正義」や「大義」を守る「ヒーロー」よりも、どんな汚い手段を使っても民を守る、そんな泥臭く少し“ズルい”ヒーローへと成長していきます。次はどんな“策”を使ってくれるのか、見ている方も意表を突かれる、そんな意外性も人気の秘密ではないでしょうか?
実は、10話を超えても、堺さん、大泉さんの演じる信繁・信之は10代。あえて子役を使わずに、40オーバーの役者に15歳の初々しさを演じさせる事で、“一人の人間の成長”がしっかりと分かりやすく伝わるあたりも、視聴者の視点や共感がぶれずに見続けやすい要因のひとつかもしれません。まだまだ続く『真田丸』。今後の展開が楽しみで仕方ありません。
文/藤原ゆうこ